☆保育士ミニコラム☆No.5~卒園児(H19年度卒園)が職業体験にやって来た!Part1

P1190324だいぶ前のこと(H28.7月)に遡りますが、平成19年度の卒園児である、10名の八万中学校3年生が、故郷ひまわりにて3日間の職業体験を行いました。
会社やお店など、様々な体験先の中から、この10名はひまわりを希望し、来てくれたそうです。
久々の園庭や保育室の風景に、「懐かしい~」と喜ぶ彼・彼女らですが、私たち保育士にとっても、面影残るその10名の笑顔に、「懐かしい~」「大きくなったな~」と、何とも言えない温かい気持ちを味わわせてもらいました。

体験の内容等をお伝えする前に、まずは、この10名の中学生が、ひまわりの園児だった頃(約10年前)のことを私(長尾)の目線で綴りたいと思います。
私が他県、他園での保育士経験を経て、ひまわりへ就職した保育士6年目の春、担当となったクラスが、彼らの居る2歳児・すずめ組でした。
当時は狭い園庭に、大型遊具がひしめくように置いてあり、室内にもあらゆるきらびやかな玩具があり・・・という環境で、現在のひまわりより自由度は低く、大人の介入や口頭での指導(禁止・指示・命令・許可)も多かったと思います。
それでも、「外遊びが大切!!」という理念は当時も同じで、よく外で遊び、散歩にも出掛け、幼かった彼らは元気いっぱいでした。
けんかもよく起こり、2歳児ではまだ、噛みつき等のトラブルも度々あって、それに対して私たち保育士は、「噛んだらダメ」と注意をしたり、けんかの原因を見定めて仲介するような関わりを頻繁にしていました。

翌年(H17年度)、彼らが3歳児・つばめ組となった年の秋に、ひまわりは大きく保育の改革を行いました。
当時も既に、子どもや若者の体力低下や学力低下、コミュニケーション能力の欠如等、様々な社会的な問題が悪化の一途をたどっていると、テレビや新聞でよく取り上げられていました。ひまわりでも、日々、子どもの為にと力を尽くし、一生懸命保育をしているものの、そのような社会の現状に、「他人事ではない」「幼児期の育ちの中に問題の芽がある」と感じ、何かこの状況を打破する方法はないものかと探っていました。2007_062500020004

(↑彼らの保育園時代の写真1)
そんな中、全国規模の保育の研修会に参加し、福井県で実践されている保育について知ったこと、その保育の指導者である長谷光城氏の講演を聞いたことは、今となっては、”ひまわりにとっての運命的な出来事だった”と言えるでしょう。
「幼児期の子どもの本質に根ざした子育てが、産業化社会の中で忘れられ、柔軟な本当の能力の欠如、不登校、いじめ等、多くの問題が生じてきている。」と。そして「それらの問題の芽は、幼児期の育ちの中にみられる」「子どもの本質に根ざした保育をしなければ」ということを、私たち保育士は、長谷氏との出会いにより、強く認識するようになり、「子どもが自ら遊びを発見し、拡げ、深めるプロセスを体験できる環境が大切!」と、それまであった園庭の遊具、(室内の)既成の玩具を撤去し、子どもたちが自然物(水、土、泥、砂、木、草花など)に十分にかかわって遊べる環境を整えました。そして、大人は子どもへの口出しをなるべく控え、(子どもたちが)限りない自由を感じ、人への信頼感を基盤として、自己を十分発揮したうえで、自立に向かうことができるようにと関わり方を見直しました。

子どもたちは、最初、そんな環境の変化にもさほど影響されず、普段通りの姿だったので、子どもたちの戸惑いを心配していた保育士たちは、少し安心したものでした。

しかし、、、日が経つにつれ、ジワジワと子どもたちの変化を実感するようになりました。これまであまり大人を困らせることの無かった子どもが、いたずらを繰り返したり、自分の思いを出して、友達とケンカをしたりすることが増えてきました。そんな行動を見て、「やめて」「それはダメ」と言いたくなるのをぐっとこらえながら、今までどれだけ私たち保育士が子どもの行動一つ一つに口出しし、「禁止・指示・許可・命令」を多用していたのかを実感しました。(1113)
(保育園時代の写真2)
私たち保育士の困惑は大きくなりましたが、その一方で、子どもたちは日に日に活力を増し、表情豊かで生き生きとしてきました。既成の玩具で遊んでいた頃と比べ、自分で工夫をして物を創ったり、体を動かしたり、友だちと密に関わって遊ぶ姿が増えてきました。(1913)
(保育園時代の写真3)
既成の玩具が無いので、その辺にある物やロッカーなどが遊具となり、「わー!そんな所にも登っちゃってる!」「わー!またケンカしてる!」とヒヤヒヤさせられることもしょっちゅうでしたが、「こんないたずらも、ケンカも、子どもの成長には必要不可欠なんだ」と信じて見守るようになると、子どもたちと保育士との関係も、以前より良好になりました。「どんな自分も否定せず、受け止めてくれる」そんな風に子どもたちが感じ始めたのだろうと思います。「子どもを信じて見守る(口出しをせずに)」それを実践するのは簡単ではありませんが、『乳幼児期の人や物との関わり、体験が、生涯にわたってのその子どもの人格を形成する』と、保育士という仕事の責任の重大さを改めて認識した私たちは、発達心理学の本を読み合わせたり、事例研究をしたり、子どもたちの育ちや保育士の関わり方について議論をしたりして、一丸となってより良い保育を目指し始めました。
(Part2へ続く)(長尾)